
アルヴォアの家のベッドを借りて一晩ゆっくり休んだアニリン。
朝になると装備を整え、ホワイトランを目指して旅立った。

ホワイトランを目指す理由は単純明快。
ヘルゲンから命からがら逃げ延びた、昨日のこと。






……といった具合で、ホワイトランの首長バルグルーフへの伝言を頼まれたのである。
アニリンとしても、一度都市に行っておきたかったので渡りに船といったところか。


アニリン「って、入れないじゃん! リバーウッドからの救援要請なのに!」
ホワイトラン衛兵「何、リバーウッドも危ないのか? それなら通れ!」
アニリン「あ、ありがとう」



門が閉鎖されていたにも拘らず、意外と賑わっている街に感心するアニリン。
流石はスカイリム随一の経済都市といったところか。

そして目的地であるホワイトランの首長の居城ドラゴンズリーチに到着。
中に入ると何やら剣呑な雰囲気で……

アニリン「ヘルゲンの件で、報告があって来ました」
イリレス「ああ、だから衛兵が通したのね。それなら首長と話して頂戴」

彼こそがこのホワイトラン地方を治める首長、偉大なるバルグルーフ。
アニリンは彼にヘルゲンで何があったのかを大雑把に語った。
無論、自分がその時どういう立場だったのかは伏せて。


イリレス「首長、ただちにリバーウッドに兵を送りましょう!」
プロベンタス「ファルクリースの首長はそれを挑発と捉えるでしょう! 我々がストームクロークと共に攻め込んでくると考える筈です! このまま……」
バルグルーフ「もういいだろう! イリレス、今すぐリバーウッドに部隊を送ってくれ。ドラゴンが我が領地を焼き尽くし、人々を殺しているのにボケっと突っ立っているつもりはない」
というようなやり取りがあり、少し拗ねて仕事へと戻るプロベンタスと、鼻息荒く衛兵の手配へと向かうイリレスを見送ると、バルグルーフはアニリンに向き直った。



アニリン「特殊な才能?」
アニリン(もしかして、コソ泥だってバレてる??)

そんなことを内心思って恐る恐るついていくアニリンだったが、どうやら彼女の想像とは違う話らしい。
王宮魔術師のファレンガーはドラゴンのことを調べており、バルグルーフはその件でアニリンの手を借りたいようだ。

どうにも面倒な香りがする話だが、アニリンとて盗人である前に一人のノルドである。
面倒かどうかは兎も角、回りくどい話は好きじゃないのだ。
アニリン「どこに行って、何を取って来れば良いの?」
ファレンガー「単刀直入だな、気に入った。探してもらいたいのは石板だ」


アニリン「了解了解。装備を整えたらすぐ行くよ」
ファレンガー「一応言っておくが、ブリーク・フォール墓地は古いノルドの遺跡だ。危険な罠やドラウグルで溢れているから気を付けろよ」
アニリン「ご忠告どうも、ファレンダーさん」
ファレンガー「ファレンガーだ」
そうしてアニリンは準備の為に街へ繰り出した。
まずは武器屋で弓を新調。ロングボウから、帝国軍が採用する弓に変更する。
次に鍛冶屋で背嚢も入手し、いざリバーウッドへ。

リバーウッドにつくと、アニリンは……

リバーウッドを通り抜けて、ヘルゲンへ。
彼女には探し物があったのだ。
アニリン「誰にも盗られてないといいけど……」




まだ火の消えない家屋を横目に、砦の中に入ってみるアニリン。
果たして、その探し物は残っていた。
アニリン「あ、あったぁぁぁー!!」

彼女が探していたのは妖刀「はたもんば」。
以前、とある筋から盗み出して以来、その美しさと特殊な力に魅了され、すっかり彼女の愛剣となった武器である。
その愛しっぷりはハンマーフェルでの脱獄の際にこれの為だけに相当の無理をした程であり、それだけ大切にしているものだった。
今回、帝国軍に拘束された際にも取り上げられていたのだが、きちんとこの砦に残っていたことに、彼女は大いに安堵した。
アニリン「良かったぁ……やっぱりこれが一番よね」
そうして愛剣も取り戻した彼女はリバーウッドへ戻り、不要となった鉄の剣と盾の売却の為、雑貨屋リバーウッド・トレーダーに入った。
すると、店を経営する兄妹が何やら言い争っている。



アニリン「いや……何かあったの?」
ルーカン「賊に入られたんだよ。ドラゴンの爪の形をした装飾品を盗まれたんだ、純金のな」
アニリン「純金!」
純金のドラゴンの爪の装飾品というワードに、即座にカネの香りを嗅ぎ付けたアニリン。
しかも、盗賊達の行き先はブリーク・フォール墓地だというではないか!
アニリン「私も丁度そこに用事があるの! 折角だし探してあげる!」




ブリーク・フォール墓地への行き方について、カミラに案内してもらう。
ただ、兄のルーカンが怒るので案内は村の外れまでとのこと。
アニリン「ありがとね、カミラさん」
カミラ「こちらこそ。幸運を祈ってるわ」
とは言っても、夜も遅いので一旦アルヴォアの家で夜を明かす。




そして翌朝。
アニリン「さぁ登るぞ!」

山を少し登ると、すぐに姿を現すのがこの監視塔。
中では数人の山賊がこの道を通る者を待ち構える。

アニリンは正直なところ、正面戦闘が苦手な方だ。
隠密と弓術に長け、逆に重装や両手武器はノルドの癖に全く以て苦手としている。
なので自然と彼女のとる戦術は隠密行動と狙撃になる。



ブリーク・フォール墓地の前にも数名の山賊が屯している。
アニリンは一人ずつ確実に仕留めていった。




正面の山賊達を排除し、ブリーク・フォール墓地内部へと侵入したアニリン。
前方に山賊が居り、何やら話している様子。
男山賊「あのダークエルフ、先に行きたがってるぜ。好きにさせろ、俺達の首に危険が及ぶよりマシだ」
女山賊「アーヴェルが戻らなかったら? あの爪の取り分をもらわなきゃ!」
どうやら仲間割れでもしたのか、アーヴェルなるダークエルフが抜け駆けしたらしい。

アニリン「こういう遺跡って、稼ぎにはなるんだけど危険な罠だらけなのがなぁ」
そんなことを呟きながら奥へ進むアニリンの目の前に、山賊の後姿。
どうやら格子を開ける為に、レバーを引くようだが……。



レバーを引いた途端に無数の矢に貫かれ、あえなく死亡する山賊。


真のノルドはこんなものに引っかからない!
(真のノルドとは何なのかは永遠に分からない)


アニリン「絵柄を合わせてレバーを引く、こうだ!」
こんな調子で奥へと進んでいくアニリン。



アニリン「誰か居るの?」
誰かの声を聞き付け、蜘蛛の巣だらけの部屋に入るアニリンを待ち受けていたのは――

アニリン「うわっ、でっか!?」
アーヴェル「おーい、そこのお前! そいつを何とかしてくれ!」
傷付いたフロストバイト・スパイダーと、その奥に誰かが捕まっているようだ。
アニリンは刀を抜き、フロストバイト・スパイダーを斬り伏せる。
「はたもんば」は斬った相手の生命力を奪い、持ち主のものとする妖刀なのだ!


アニリン「あなたがアーヴェルね?」
アーヴェル「ああ、そうだ」
アニリン「金の爪持ってるよね?」
アーヴェル「ああ、あの爪か。あの爪で開く扉の先! ノルドが隠した力は信じられないくらいすごいぞ! 俺を下に降ろしてくれたらお前にも見せてやるよ!」
アニリン「先に見せてもらいたいね」
アーヴェル「見て分からないのか!? 俺は今動けないんだぞ!」
アニリン「……仕方ないなぁ」
アーヴェルを信用出来ないアニリンだったが、渋々彼を拘束する蜘蛛の巣を断ち切った。
地面に降り立ったアーヴェルは、それこそさも当然のことであるかのように逃走した。

アニリン「分かってたから渋ったんだよ、バーカ! 待ちなさいよ!」
言いつつ逃げ出したアーヴェルを追いかけるアニリン。
しかし、その逃走劇は長くは続かなかった。
アニリン「ちっ、ドラウグルか!」

ドラウグルがアーヴェルを襲い彼が足止めされたと思ったのも束の間、彼らは今度はアニリンに襲いかかってきたのだ。
アニリン「邪魔っ!」
ドラウグルを斬り伏せるアニリン。
その間に、アーヴェルは立ち上がって先へと進もうとした。
……の、だが。

ガシャーン!
アニリン「うわっ……! 壁ビンタじゃん……踏まなくて良かった」
アーヴェルが床のスイッチを踏んでしまい、トラップによって派手に吹き飛んだ。
即死である。

アニリン「次があればもっと上手く生きるんだよ」
アーヴェルの死体から金の爪と、彼の日記を発見したアニリン。
どうやらこの金の爪が扉の鍵というのは本当らしい。


アニリン「まだ何か秘密がありそうね……奥へ進んでみましょ」
その後も数々のトラップや、ドラウグル達を切り抜けて――











アニリン「おっ……なんだこの壁?」

アニリン「いや、壁というより……扉? 真ん中のは鍵穴かな……あっ」
見覚えのあるフォルムに、アニリンは膝を打った。
金の爪の使いどころはここなのだ。
早速試そうとして、しかし待てよと思い止まる。
上のマークは何のためにあるものだろうか、どうやら動かせるようだが……何の気なしに金の爪を眺めたアニリンは、これまた閃いた。

アニリン「あっ、これだぁー!」
金の爪の掌の部分のマークと、扉のマーク。
これを合わせた状態で使うのが正しい。
そう思い至ったアニリンは、すぐに扉のマークを動かし、そして金の爪を鍵穴に差し込んだ。



その扉の先に広がっていたのは、どこか神秘的な雰囲気のある、広い空間だった。
アニリン「わぁ……!」

アニリン「なんだろ、何か聞こえる……」
景色に見惚れるアニリンだったが、ふと何か声のようなものが聞こえることに気付く。
それに釣られるように歩を進めると、そこには奇妙な壁があった。

アニリン「何これ……?」
その壁に近付いた時だった。

彼女の脳内に、言葉が流れ込む!
知らない言葉の筈なのに、彼女はその意味を瞬時に理解した。
アニリン「これは、一体……?」

ガコンッ。
石棺の蓋が開く音に振り向くと、ドラウグルが起き上がっていた。
アニリンは考える間もなく、彼と相対する。
アニリン「な、なんっ……!」

奇妙なドラウグルであった。
彼が叫ぶと、アニリンに暴風のような力が叩き付けられたのだ。
アニリン「うるさいっ!!」
しかしそんなことでへこたれるアニリンではないし、そんなものに敵わない「はたもんば」でもない。
彼女はすぐにドラウグル・オーバーロードを斬り伏せた。

アニリン「はぁ、はぁ……手強い奴だった」
息を整えながら、ドラウグル・オーバーロードの死体から石板を回収する。
これがファレンガーに頼まれていたドラゴンストーンであろう。
アニリンは他に金目のものがないかを適当に漁り、ブリーク・フォール墓地を後にした。
アニリン「あれ何だったんだろう……」

リバーウッドへ戻るには少々遅い時間だった為、森の中で野営したアニリンだったが、あの奇妙な力のことが頭から離れず、あまり眠れなかった。
翌日、アニリンはリバーウッド・トレーダーを訪れた。
最初、金の爪は返さずに売り払うつもりだったが、高く売れそうには到底見えず、素直に返して報酬をもらった方が得になると判断した為である。

アニリン「見つけてきたよ、ほら」
ルーカン「見つけたのか? はっはっは、ありがとうよ。俺と姉妹の為に、本当にすごいことをやってくれた」
カミラ「これがあるべき場所に戻るというのは私達にとって大切なことなの。ありがとう、アニリン」
アニリン「ど、どういたしまして」

アニリン「素直に感謝される、っていうのも悪くないもんだなぁ」
久し振りに受け止めた純粋な善意の言葉に、アニリンは少し暖かい気持ちになれた気がしたのだった。
次回へ続く。
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