アニリン「さぁ、登るぞ!」
宿屋で充分な休息を取り、世界のノドを前に、気合十分なアニリン。

目指すのは世界のノドの山頂近く、グレイビアードが住んでいるというハイ・フロスガー。
しかし危険はオオカミと滑りやすい道だと聞いている為、彼女らは気楽である。
心配していることを強いて言うなら単純に階段が長いということくらいだろうか。





アニリン「うわぁ、ドラゴン!?」



エセル「なんだ、意外と大したことなかったな」
アニリン「ビックリしたぁー……!」
途中で突然飛んできたドラゴンを討伐し、ドラゴンソウルを吸収。
エセル「成程、それがドラゴンボーンの力というわけか」
その後も調子良く登っていた3人だったが――


アニリン「待って、あれトロールじゃない?」
リディア「フロスト・トロールのようですね」
アニリン「あのおじさん、道中の危険はオオカミくらいだって言ってたじゃん……」
エセル「ドラゴンは飛んできたから兎も角、トロールはなぁ……」
アニリン「そうだけどさぁ……」
エセル「まぁ、文句を言ってもしょうがない! 行くぞ!」
アニリン「ちょっ……!」
フロスト・トロールへと駆けて行くエセル。
彼女に気付いたフロスト・トロールも岩から下りてきて応戦する。
決着は意外にも早く着いた。

エセル「所詮トロールだからな」
アニリン(この女ほんとなんで治癒師なんだろう……)
そんなこともありながら、ついに――


アニリン「着いたぁー!!」

エセル「ここがまだ山頂じゃないというのだから、高い山だな」
リディア「タムリエル最高峰といわれているわね」
アニリン「ほんとにねー」
アニリン「あっ、クリメクさんの荷物はここでいいのかな」


アニリン「それじゃ、入ってみよっか」
エセル「たのもう!」
アニリン「それ決まった挨拶か何かなの?」


アニリン「呼ばれたので来ました!」
アーンゲール「ふむ。お前が真に力を授かったのか、確かめてみよう。見せてみよ、ドラゴンボーン。我らにお前の声を味わわせよ」
アニリン「と言うと?」
アーンゲール「我らに向かってシャウトを使ってみせるのだ」
アニリン「成程」
アニリン「Fus!」

アーンゲール「ああ、確かにお前はドラゴンボーンのようだ。ハイ・フロスガーへようこそ。私はアーンゲール。グレイビアードの声だ」
アニリン「私はアニリーネよ。アニリンで良いわ、よろしくね」
アーンゲール「そうか、アニリーネ。お前は何をしにここへ来た?」
アニリン「何をしに、って……呼ばれたからよ。ドラゴンボーンになるってことはどういうことか、ここで聞けるらしいし」
アーンゲール「お前以前の竜の血脈達を導こうとしたグレイビアード達と同じく、我々もその道へとお前を導く為、ここに居る」
アニリン「……ああ、これまでもドラゴンボーンがここに来たのね?」
アーンゲール「お前が初めてではない。アカトシュが初めて定命の者にその恩恵を授けてから、幾人もの竜の血脈が居た」
アニリン「竜の血脈……」
エセル「……待ってくれないか。それではアニリンは皇帝の……セプティム家の血を引いているというのか?」
アーンゲール「時代の変わり目に度々ドラゴンボーンは現れてきた。皇帝の血筋であるかどうかは我々の知るところではない」
エセル「つまり、皇帝の血筋でなくてもドラゴンボーンにはなり得るということか」
アニリン(皇帝の親戚が詐欺師やコソ泥だったらビックリだよ……)
様々な書籍に見られるタイバー・セプティムの所業について、「考えてみたら初代皇帝クズじゃねぇか」と思うこともあるアニリンだが、流石に歴代の皇帝達の関係者に自分のような盗人が居るとは考え難いと思っていた。
エセル「しかしそうすると、現皇帝はドラゴンボーンでないのが確定的だな」
アニリン「いきなり不敬だね??」
アーンゲール「アニリーネがこの時代で唯一のドラゴンボーンかどうか、それも我々の知るところではない。明かされたのは、今のところ彼女だけだ。それしか言えぬ」
エセル「ふむ、同じ時代に二人以上存在することもあり得るのか……いや、話の腰を折って申し訳ない。続けてくれ」


アーンゲール「叫ぶ時、お前は竜の言葉で喋ることになる。お前の竜の血脈が、力の言葉を学ぶ為の内なる力を与えているのだ」
アニリン「力の言葉?」
アーンゲール「全てのシャウトは3つの力の言葉で形作られている。言葉を一つずつ習得していけば、お前のシャウトも順に強くなっていく」
アニリン「成程ね。それを教えてくれるわけ?」
アーンゲール「そうだ。まずはアイナース師が、揺ぎ無き力二つ目の言葉『Ro』をお前に教える」
アニリン「何て意味?」
アーンゲール「『均衡』だ。これを『Fus』――『力』と合わせることで、より鋭くスゥームを研ぎ澄ませる」



アニリン「Fus Ro……ね。成程」

アニリン「えっ、そ、そうなの?」
アーンゲール「力の言葉について学ぶことはまだ最初の一歩に過ぎない。それをシャウトとして使うには、まず絶え間ない鍛錬を通してその意味を探らねばならん」
アニリン「でも、私は……」
アーンゲール「ドラゴンボーンは、倒したドラゴンから直接その生命力と知識を吸収出来る。絶え間ない鍛錬もなくな」
アニリン「それが恩恵、ってことか。私にしてみるとただの言葉なのに、不思議ね」











アーンゲール「次の訓練は中庭で行う。ボッリ師に続け」
アニリン「はーい」

アーンゲール「これから教えるのは旋風の疾走。ボッリ師が『旋風』を意味する『Wuld』を教えてくれる」



アーンゲール「それでは実際に使ってみよう」



アニリン「おおっ、一瞬であんなところに!」
アーンゲール「次はお前の番だ」


アニリン「Wuld!」

アニリン「何これ楽しい! びゅーんって! びゅーんって飛んだ!!」

アニリン「でもなんで私がこんなこと出来るのか分かんないよ」
アーンゲール「理由があって神々より恩恵を授かったのだ。どう扱うかは、お前次第だ」
アニリン「私次第……」
アーンゲール「次が最後の試練だ」


アニリン「分かりました! じゃあ行ってきます。ありがとうございました!」
グレイビアードに礼を言い、下山するアニリン達。
イヴァルステッドに戻って、物資の件の報告をする為にクリメクを探す彼女達だったが――

アニリン「そうだね、グレイビアードにはそう言われた」
信者「そして、遅かった。お前の嘘はもう人々の心に根付いてしまった」
アニリン「嘘?」
エセル「なんだ、いきなり随分なご挨拶だな」
信者「お前の心臓を抉り出し、彼らの心の過ちを暴き出してやるまでだ、詐欺師め!」

エセル「何だ、こいつら!?」
アニリン「ミラークって誰!?」
リディア「兎も角、襲いかかってくる以上は敵よ!」

イヴァルステッドの路上でいきなり始まった戦闘。
狼狽えつつも応戦するアニリンに比べて、衛兵の対応は早かった。
彼女が片方の信者を攻撃している間に、もう片方の信者はエセル、リディア、そして衛兵達に袋叩きにされ、アニリンの目の前の信者もすぐに斬り伏せられたのだ。

アニリン「何だったんだろう……」
エセル「何か持ってるか?」
アニリン「うーん……あっ」

アニリン「抹殺指令だコレ!?」
エセル「ここに来る途中といい、こんなに頻繁に暗殺者を仕向けられるのか、お前」
アニリン「知らないよ! 初めてじゃないけど、そんなに頻繁な話じゃなかったよ!」
リディア「偶には来てたのね」
アニリン「もうヤダさっさとホワイトラン戻ろ!」







イライラしたままホワイトランに戻ってきたアニリン。
見かねたリディアが「折角だから家を買わないか」と提案する。
アニリン「それって、ホワイトランに拠点を構えるってこと?」
エセル「良いと思うぞ。長年住んでいるが、良い街だ。それに確か、売り出し中の空き家があった筈だ」
リディア「ブリーズホームですね。兎に角、執政に話をしてみましょう」
そういうわけでドラゴンズリーチのプロベンタス執政を訪ねるアニリン達。
アニリン「街に家を買いたいんですけど」

プロベンタス「5,000ゴールドになるが、支払えるか?」
アニリン「あ、はい。じゃあお願いします」
プロベンタス「うむ、それではこれが新居の鍵だ! 必要なものがあればまた言ってくれ」
アニリン「ありがとうございましたー」
鍵を受け取ったアニリン達はすぐに新居へと赴く。
アニリン「わぁ、立派な家! 実家より立派じゃん!」

玄関を開くとそこに広がっていたのは――
アニリン「んー……まずは掃除かな!!」


エセルとリディアに手伝ってもらい、家の中を掃除し、更にはプロベンタスに頼んで家財品を購入。
また、リディアはアニリンの私兵である為、アニリンが住居を用意しなければならないと聞き、彼女の部屋も設える。
全てが完了する頃には、完全に日が暮れていた。
アニリン「出来たーっ!」

アニリン「今日からここが私の家! リディアさんもよろしくね!」
リディア「よろしくお願いします」
新居を手に入れ、機嫌も直ったアニリン。
早速風呂に入ってみて癒されるのであった。

次回へ続く。
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