カイネスグローブでドラゴンのサーロクニルを討伐し、リバーウッドで落ち合う約束をしてデルフィンと別れたアニリン達。
一度ウィンドヘルムへ立ち寄ろうと歩くアニリンを呼び止める声。


アニリン「ありがとね」
エセル「首長からの手紙か。どこの首長だ?」
アニリン「えーと……ファルクリース? 今のファルクリースの首長って誰なの?」
エセル「私の記憶が正しければシドゲイルという男だ。若手だが、無難な統治を行っているという噂だ」

アニリン「ファルクリースか……」
エセル「行ってみても良いんじゃないか? リバーウッドとも程近いし、従士や土地以外にも報酬が期待出来そうだ」
リディア「デルフィンの準備も時間がかかりそうですしね」
アニリン「うーん、そっか。じゃあ、行ってみよっか」
アニリン(それにしても、一体どこから私のことを聞きつけるんだろう?)


ウィンドヘルムで馬車を雇い、ファルクリースへ。
途中リバーウッドに立ち寄ったが、デルフィンが戻ってきておらず、取り敢えずファルクリースの用事を優先することにした。
アニリン「こんにちは、お手紙いただいたアニリーネです」



アニリン「山賊の始末、ね。どこに行けば良いですか?」
シドゲイル「エンバーシャード鉱山だ。リバーウッド近くの」
アニリン「ああ、あの道端の。分かりました。片付けてきます」
シドゲイル「頼むぞ。報酬に期待してくれ」

エセル「たらしだな、あの男」
アニリン「そう思う?」
エセル「仕事が出来るタイプには見えない。が、実際こうして無難な統治が出来ているというのは、部下を扱う才能より有能な部下を集める才能に恵まれているんだろう」


そんなことを話しながら、道端の山賊やフロストバイト・スパイダーを始末し、エンバーシャード鉱山へ辿り着く。



入口の見張りを斃し、中へ。




アニリン「見張りは斃したし、罠も素通りしちゃったよ」

話していた山賊達も弓矢で隠密に始末して奥へ。

アニリン「おっ、このレバーは……」

レバーを引くと、板壁が倒れて橋になった。
アニリン「成程ね」
エセル「奥から誰か来るぞ」



アニリン「その必要はないよ、っと」

アニリン「奥を見に行ってみよう」
リディア「そうですね。きっとまだ居るでしょう」


エセル「山賊達の宝物庫だな」
リディア「鍵がかかっていますよ」
アニリン「こんなの鍵がかかってるって言わないよ」

得意のピッキングであっという間に鍵を開けるアニリン。
アニリン「ほらね」
エセル「前々から思っていたが、随分隠密行動やピッキングに手慣れているな」
アニリン「な、何のことかな」

エセルとリディアにもこれまでの人生のことなど話していない。
二人はアニリンのことを元々冒険者だったと思っており、ただの盗人などとは思ってもいないのだ。
アニリン(その内この二人には話した方が良いよね……)


アニリン「1、2、3……全部で3人? これで全部?」
エセル「そのようだな」
アニリン「じゃ、さっさとやっつけよう」


アニリン「これで全員だね。ファルクリースに戻ろう」
最後の山賊も不意打ちで全て始末したアニリン達。
金目のものも回収し、ファルクリースへ戻る。

アニリン「エンバーシャード鉱山の連中はみんな始末しました」
シドゲイル「本当か? これで奴らも思い知ったろう。これは報酬だ」
アニリン「ありがとうございます」
シドゲイル「良いことを教えよう。君のことは好きだ。自分の手を汚すのを厭わないからね」
アニリン「それは……どうも。光栄です」
シドゲイル「もし良かったらこの地に住んでもらっても良いくらいだ。ファルクリースで土地を買う権利を与えよう。気が向いたら執政に話してみてくれ」
アニリン「ありがとうございます」

ファルクリースを出て、リバーウッドへ。
デルフィンはまたも不在だった。
ホワイトランの自宅にでも戻ろうかと相談していたところ、道端でスヴェンと出会う。
彼はよく宿屋スリーピング・ジャイアントで歌っている吟遊詩人の男だ。

アニリン「何なの? 二人揃ってカミラさん狙いなの?」
スヴェン「そうさ。カミラなら、こっちがリバーウッド最高の男だって分かってるさ。あのエルフは、自分が選ばれると思ってるんだろうがな」
アニリン「へぇ」
カミラ・バレリウスといえば雑貨屋リバーウッド・トレーダーの店主の妹で、アニリンとはブリーク・フォール墓地での探索の件で知り合い、今では時々宿屋で飲み交わす程度には仲が良い。
最近では兄のルーカンから「近頃妹がお前の話ばかりしている」と愚痴られたこともあったが。
どうやらスヴェンと、製材所で働くウッドエルフのファエンダルは両方とも彼女に懸想しているらしい。

アニリン「んー、結構しつこい……ぁいや、情熱的な性格っぽいもんねぇ、ファエンダルさん」
エセル「会ってもどうせ殆どアニリンの話しかしないんじゃないか……?」
スヴェン「そこでだ。この手紙を『ファエンダルから』と言ってカミラに渡してくれないか?」
アニリン「えっ、それ私に頼む?」
スヴェン「まさか俺が直接渡すわけにもいかないだろう? 余所者のお前が適役だ」
アニリン「うー、仕方ないなぁ」
スヴェン作の偽手紙を受け取ると、アニリンは何の気なしにその手紙を開いてみた。

アニリン「んー、これはひどい」
エセル「悪い顔してるぞ。何を企んでる?」
アニリン「ふふん、ちょっとね」
アニリンが向かった先は雑貨屋ではなく、製材所。
当然そこに居るのはカミラではなく、ファエンダルである。

アニリン「ファエンダルさん、ファエンダルさん。これ、スヴェンさんから頼まれたの。あなたからと言ってカミラに届けるように、って」
ファエンダル「何だと? あのホラ吹きめ、何を企んでる?」
偽手紙の中身を読むファエンダル。
その表情は徐々に険しくなっていく。
ファエンダル「あの男、こんなものを使ってカミラと俺を仲違いさせるつもりだな? それならこっちにも考えがある」
ファエンダルは懐から紙とペンを取り出すと、その場で手紙を書き始めた。

アニリン「どれどれ……」
彼の目の前で、ファエンダル作の偽手紙を早速開くアニリン。

アニリン「きっっっっっしょ!!」
ファエンダル「そうだろう? それをスヴェンが書いたと思うと……」
アニリン「いや、文面がキモイ! 何食べてたらこんなん思い付いて、よりにもよって好きな子に渡すのか理解出来ない! きっしょ!」
ファエンダル「あ、ああ、それが狙いだからな。だが、そこまで言わなくても良いんじゃないか?」
アニリン「どうかと思うよ! 私だったらこんな手紙寄越す奴とはもう関わり合いになりたくないわ!」
ファエンダル「そ、そこまで言わなくても……」
アニリン「ないわぁ……絶対嫌だよこんなんもらったら。効果絶大だろうね」
ファエンダル「……」
何故か落ち込んでしまったファエンダルを尻目に、アニリン達はリバーウッド・トレーダーへ。
アニリン「カミラさん、これ、スヴェンさんからだって」

スヴェンからの手紙だと聞いて好意的な反応のカミラだったが……


アニリン「うん、分かった」
カミラ「まったく。そもそも私と仲の良いあなたを利用するなんて、馬鹿げてるわ」
アニリン「そうだよねぇ。内容は兎も角、手紙くらい直接渡さなきゃだよねぇ」
そのまま小一時間程カミラと世間話をし、アニリン達は店を出た。

ファエンダルに事の顛末を話すと、彼は小額ながら報酬をくれた。
その後、日陰で休憩しながら大笑いするアニリン。

エセル「お前、わざとやっただろう」
アニリン「そりゃ勿論。すっごく笑えた」
エセル「確かに傍から見てる分には面白かったが、どうかしてるぞ……」
アニリン「いやぁ、偶にはこういう悪戯も良いかなって」
エセル「悪戯って、お前……」
アニリン「勿論スヴェンさんには悪いと思ってるよ? でも、ああいう姑息な手を使うのもどうかと思ってね」
エセル「ファエンダルは良いのか?」
アニリン「やり返しただけだし、良いでしょ」
エセル「まったく……」
エセル(現状で一番カミラと近しい人物は自分だという自覚がないのか……)
エセルが内心苦笑しているとは知る由もなく、アニリン達はホワイトランへ戻っていったのであった。
次回へ続く。
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