ホワイトランの宿屋で夕食を摂るアニリン達。
火の近くでアニリンが飲んでいると、同席したカルロッタ・ヴァレンシアに声を掛けられた。
カルロッタ「あら、従士様」
アニリン「なんだかくすぐったいのでやめてください」
カルロッタ「それは悪かったわ。時に、私の悩みを聞いてくれる?」
アニリン「内容によるかな」

アニリン「街中で刃傷沙汰はちょっと……」
カルロッタ「時間の問題よ。彼は私を口説き落とすって吹聴しているそうなの。『生粋のノルドはどんな獣も屈服出来る』んですって。ふん」
アニリン「ああ、街の男の半分があなたに求婚したって聞いたことがあるわ。あいつすぐそこに居るから話してみようか?」
カルロッタ「ええ、お願い。彼の分厚い頭蓋骨に突き通せることを期待してるわ」
アニリンは立ち上がると、歌っているミカエルへと近寄った。
アニリン「ハァイ、紳士さん」
ミカエル「これは従士様。どのようなご用件で?」
アニリン「あんたの出した本読んだわよ。カルロッタさんに近付くのはやめたらどう?」
ミカエル「ああ、ホワイトランガイドか。いや、カルロッタに頼まれたんだな? だが、あの気性の荒い未亡人は俺のものだ。彼女自身、まだ気付いてないだけさ」
アニリン「彼女は手に入らないわ。少なくとも、あなたの手には。刃傷沙汰になる前に、馬鹿なことはやめた方が身の為よ」


アニリン「素直で何よりよ。一曲お願い」
ミカエル「ああ、喜んで。リクエストはあるかい?」
アニリン「『赤のラグナル』は知ってるでしょ?」
ミカエル「勿論さ」
ミカエルと話している間に、カルロッタは帰ってしまったので、アニリン達は翌朝市場の彼女を訪ねた。
アニリン「もう彼はあなたを困らせないわよ」


アニリン「どうも。またね」
そろそろデルフィンも戻った頃だろうと考え、リバーウッドへ向かおうとしていたアニリン達だったが、城門の近くで呼び止められてしまった。
振り向けば、朝から城門で衛兵と揉めていたレッドガードの男達だ。
アリクル戦士「人探しへの協力を願いたい」
アニリン「私に? 誰を探しているの?」


アニリン「んー、分かった。ところで念の為に聞くんだけど、あんた達アリクル戦士よね?」
アリクル戦士「そうだ。何か関係あるのか?」
アニリン「いいえ、別に。まぁ精々謝礼に期待しとくわね」

エセル「この街でレッドガードの女といえば、ナゼームのところの奥さんか、宿屋のサーディアくらいか?」
リディア「アムレン家のサフィールさんも居ますね」
アニリン「んー、そっか。まぁまさかあそこ走ってる子なんてことはないだろうしね」

アニリン「取り敢えず、一番手頃に会えそうなサーディアさんに会ってみようか」
ということで、宿屋バナード・メアに再びやってきたアニリン達。
女給のサーディアに声を掛ける。
アニリン「サーディアさん、アリクルの戦士達がレッドガードの女を探してるって知ってる?」


アニリン「……初手で大正解とは」
エセル「まぁ、3人の中では一番の新顔だったから、考えやすいといえば考えやすかったか」
サーディアについて行った先は宿屋の二階、彼女の私室。
そこで彼女は振り向くなりナイフを抜いた。

アニリン「あー、落ち着いてよ。あなたを探すように頼まれただけ……ていうか、下であんなこと言われなきゃ気付きもしなかったよ」
サーディア「っ……と、兎に角、私のことは彼らに話さないで!」
アニリン「衛兵にでも頼れば?」
サーディア「駄目なんです。彼らだって賄賂を受け取れば私を捕まえにやってくるか、アリクル戦士達を素通りさせるでしょう。この街で信用出来る人なんて一人も居ません」
アニリン「成程?」
エセル「まず連中があなたを探している理由をお聞かせ願いたいな」
サーディア「……私は、ホワイトランの人々が思っているような人間ではありません。本当の名前はイマンといいます。ハンマーフェルのスーダ家の貴族なんです」
アニリン「ハンマーフェルの貴族の娘をなんでアリクル戦士が?」
サーディア「彼らはアルドメリ自治領に雇われた暗殺者です。私の血と引き換えにゴールドを手に入れるつもりでしょう」
アニリン「アルドメリ自治領に?」
サーディア「恐らく、私が過去にアルドメリ自治領への反対意見を公言したから、それで彼らが雇われて追ってきたのだと思います」
アニリン「成程ね。それで、私はどうすれば良い?」
サーディア「彼らを追い払ってください! 連中は傭兵で、お金の為に動いているだけです。リーダーのケマツという男を倒せば、後は散り散りになるでしょう」
アニリン「そいつはどうやって探せば良いの?」
サーディア「街に忍び込もうとして捕まった者が居ると聞きました。監獄に入れられているなら、その者から聞き出せるかもしれません」
アニリン「ふーん。分かった」

納得した風な顔をして、バナード・メアを後にするアニリン達。
エセル「まさかハンマーフェルからの亡命者だったとはな」
アニリン「いや、あの人は多分嘘を吐いてる」
エセル「何?」
アニリン「アリクル戦士は傭兵かもしれないけど、雇い主にアルドメリ自治領は選ばない。反アルドメリの発言を理由にハンマーフェルに連れて行かれて裁かれる理由もない。それどころか、アルドメリ自治領に狙われているならハンマーフェルに行った方が寧ろ安全よ。分かるでしょ?」
エセル「確かに、ハンマーフェルはアルドメリ自治領を追い払って独立を維持したと考えれば……」
アニリン「ね? まぁ、取り敢えずはケマツって人に会ってみようよ」
つい先日までハンマーフェルに居たのだ。
アニリンはそこらのスカイリムの住民達よりよっぽどハンマーフェルのことに詳しかった。
そんな彼女は、サーディアの話に違和感を覚え、アリクル戦士側の話も聞いてみたくなっていた。

アリクルの囚人を訪ね、ドラゴンズリーチのダンジョンへ。

アニリン「ケマツって人を探してるの。どこに居るのか、知ってるでしょ?」
アリクルの囚人「死にたいのか? その名を知っている以上、彼に会えば命を落とすことになると分かっている筈だ」
アニリン「いや、知らないね。でも探し出さなきゃならないのよ」
アリクルの囚人「成程、そちらも訳ありのようだな。互いに協力出来るかもしれない」
アニリン「話が早くて助かるよ。そっちの『訳』は?」
アリクルの囚人「捕まったことで兄弟達の名誉を穢してしまった。だから、ここに置き去りにされたんだ。アリクルでの人生はもう終わった」
アニリン「でも、あなたはまだ生きてる」
アリクルの囚人「ああ、この神に見捨てられた土地で死ぬつもりはない。ここから出られれば、再出発出来る筈だ」
アニリン「意外と薄情なんだね」
アリクルの囚人「ケマツは常に、我々は超一流でいなければならないと言っていた。自分はそうじゃなかったわけだ」
アニリン「そっか。それで、いくらくらい必要なの?」
アリクルの囚人「罰金か?」
アニリン「うん。肩代わりしてあげる」
アリクルの囚人「100ゴールドもあれば釈放してもらえる。それだけ払えるか?」
アニリン「良いよ。契約成立ね」
アリクルの囚人「ありがたい」
アニリン「衛兵さん、そこのレッドガードの彼の罰金支払うよ」

アニリン「言われなくたってきっと出てくよ。それじゃ、教えてもらおうか、ケマツの居場所」


アニリン「どうだろうね。もうあなたには関係のない話じゃない?」
アリクルの囚人「……そうだな。知ったことじゃない」
アニリン「うん。じゃあね」





途中ドラゴンの襲撃を受け、返り討ちにしつつも到着。




アニリン「あそこだね」


見張りを弓矢で狙撃して排除。

アニリン「……あれ、普通の山賊だ」
エセル「山賊に匿われているのか?」
アニリン「分かんない。入ってみよう」




アニリン「ほんとに匿われてるみたい」



山賊を排除し、奥へと進むアニリン達。
すると、トラップが仕掛けられた、怪しげなスペースを見つけた。


エセル「……奥で武器を抜いたぞ」
ケマツ「アリクル、動くな!」




ケマツ「武器を下ろしていてくれれば、部下に攻撃はさせない」
アニリン「良いよ。話し合おう」
ケマツ「さて……お前は私を殺しに来たんだろう?」
アニリン「ええ」
ケマツ「依頼主は……今は自らを何と呼んでいる? シャズラか? サーディアか? そのいずれかだろう?」
アニリン「そこまで分かってるんだね」
ケマツ「彼女が利用したのはお前の道義心か? 金銭欲か? それとも……もっと卑しい欲望か? まぁどうでもいい。あの女に自分は被害者だと吹き込まれたようだな」
アニリン「いいえ、私は彼女に利用されているわけじゃないわ。ただ、そちらの話も聞くべきだと思っただけ」
ケマツ「俺達のことを知っているようだな?」
アニリン「どうだろうね。彼女はあなた達を暗殺者だと言ってたけど」
ケマツ「暗殺者だと? それ程粗暴じゃない」
アニリン「それじゃ、彼女が何者かを教えてもらえる?」
ケマツ「その女は、タネスの貴族院を裏切った罪で追われている。我々は彼女をハンマーフェルへと連れ戻し、罪を償わせる為に雇われたんだ」
アニリン「成程、雇い主はハンマーフェルの貴族か。ストロス・エムカイの二次条約が締結されて20年になるけど、未だにアルドメリから圧力は受けてるのね」
ケマツ「そういうことだ。あの女は街をアルドメリ自治領に売り渡した。この裏切りがなければ、タネスはこの戦争における立場を堅持出来ていた筈だ。他の貴族にも裏切りを知られ、あの女は逃亡した。彼らは生け捕りにして連れ戻すことを望んでいる」
アニリン「ふぅん。それで、私に何をして欲しいの?」
ケマツ「我々を狙わせたくらいだ。あの女はお前を信用している。少なくとも、ある程度はな。お前がそれ以外のことをするなどとは思ってもないだろう」
アニリン「そうかもね」
ケマツ「お前は我々と戦い、勝利した。だがお前は私を取り逃がした。私は生存者を集め、あの女を手段問わず捕らえに向かっている。そう言って、逃げるよう仕向けろ」
アニリン「成程。で、どこに連れて行けば良い?」
ケマツ「ホワイトランの馬屋だ。そこへ誘導してくれれば、我々はそこで待ち伏せ、身柄を確保する」
アニリン「良いよ、やってあげる。その代わり、賞金額の一部を分けてもらえないかな」
ケマツ「良いだろう。正義に手を貸すお前の努力に報いて、喜んで分け与えよう」
アニリン「うん。じゃあよろしくね」
そうして詐欺師の隠れ家を後にするアニリン達。
リディア「それでは、サーディアを売るのですか?」
アニリン「売るだなんて人聞きが悪い。話はどう考えてもアリクルのが正しいし、私としてはケマツさんの頭の良さが気に入った」
エセル「それにしてもお前、ハンマーフェルの情勢に随分詳しいじゃないか」
アニリン「少し前まで居たからね。言わなかったっけ?」
エセル「初めて聞いたな」
そんな話をしながら、バナード・メアに戻ってきたアニリン達。
サーディアの部屋に、いかにも慌てた様子で駆け込む。
アニリン「ごめん、仕損じた! 連中はあなたを狙ってるわ!」

アニリン「もう手段を問わないみたいだよ。あなたを連れ出さなきゃならない」
サーディア「でも、どこへ行けば良いの? ずっと逃げ回っているわけにもいきません!」
アニリン「馬屋の側に馬を用意したわ。連れて行ってあげるから」
サーディア「それしかないというのですね。信じます、グズグズしないで、行きましょう」








アニリン「あなたもね。さ、リバーウッドに戻ろう!」
そうして漸くリバーウッドに戻ったアニリン達を、デルフィンは開口一番こんな言葉で出迎えた。

次回へ続く。
コメント