SkyrimRP記 ただの盗人が英雄になる話 10 「盗人、サルモール大使館に忍び込む。そして機密書類を盗み出す」

The Elder Scrolls V : Skyrim

サルモール大使館で開かれている晩餐会。
それを楽しむ貴族らしきノルドの女が一人。

アニリン本当に入れちゃったよ……

時は遡ること1週間程前。

リバーウッドに戻ったアニリン達は、デルフィンから開口一番それを聞かされた。

アニリン「あなたは来ないの?」
デルフィン「それは良いアイデアとは言えないわね。私は連中に顔が割れてる」
アニリン「成程。で、私はどうやってサルモール大使館に入るの?」

アニリン「協力者の名前は?」
デルフィンマルボーン。ウッドエルフで、サルモールを心底嫌ってる。信用して良いわ」
エセル「嫌ってるだけか?」
デルフィン「憎んでると言った方が適切ね。彼はヴァレンウッドで家族をサルモールに粛清されたの」
アニリン「成程ね。どこで会うの?」
デルフィンソリチュードの宿屋ウィンキング・スキーヴァーよ。分かる?」
アニリン「探すよ」

アニリン「悪いけど、4日くらい待ってもらえる?」
デルフィン「晩餐会は1週間後だから平気よ。何かすることでも?」
アニリン顔を作る・・・・のよ。それと、入った後はどうすれば良い?」

アニリン「書類は大丈夫?」
デルフィン「ちゃんと本物の招待状を用意するわ。サルモールのご機嫌取りを演じていれば、警備にバレることはない筈よ」
アニリン「そう。分かったわ、それじゃ1週間後にソリチュードで会いましょう」
デルフィン「ええ、気を付けて」

デルフィンと別れたアニリン達は宿屋スリーピング・ジャイアントを出てホワイトランへと足早に戻った。
そこでアニリンが宣言したのは――

アニリン「今日から数日間、贅沢な生活をします」
エセル「なんだ、いきなり?」
アニリン貴族になる・・・・・のよ。血と泥の臭いが染みついたままパーティに出席するわけにもいかないでしょ?」
リディア「確かにそれはそうですが……」

エセルリディアなんで私達もその贅沢に付き合わされてるんだろう……

毎日の入浴と、肉とワインを中心とした豪奢な食事。
睡眠も充分に取り、数日間でアニリン達は随分小綺麗になった。

そして出発の予定日。
馬車を雇い、丸一日かけてソリチュードへと移動する。
街に入ると、宿屋ウィンキング・スキーヴァーはすぐに見つかった。

アニリン「多分彼ね。ちょっと周り見ててくれる?」
エセル「あ、ああ」
リディアなんでこの人こんなに手際が良いんだろう?

アニリン共通の友人に頼まれて来たんだけど、あなたがマルボーン?」
マルボーン「何? 彼女がお前を? 彼女を信じるしかないな」
アニリン「うん。アニリーネよ、よろしくね」
マルボーン「名前なんかどうでもいいだろう」
アニリンいいえ、大切なことよ。覚えておいてね。それで、協力してくれる、っていうのは?」
マルボーン「中で必要になるものを俺に預けてくれ。武器の類だな。密かに持ち込んでおく。それ以外のものは持ち込まないようにしてくれ。奴らの警備は厳重だ」
アニリン「分かった。じゃあ、この刀と弓と矢、あとロックピックをお願い」
マルボーン「それだけか?」
アニリン「以上だよ」
マルボーン「分かった、持ち込んでおく。明日の夕方、街の外に彼女が待ってるから行ってくれ」
アニリン「ありがとね」

そのままウィンキング・スキーヴァーに泊まって翌日。
ソリチュード郊外の農場で、アニリン達はデルフィンと合流した。

アニリン「ええ、渡したわ。後は私の身嗜みだけ」

アニリン「万端ね。じゃあ、ちょっと着替えてくるね」
デルフィン「ええ」

そうして風車の中で着替えと化粧を始めるアニリン。
1時間程経つと――

デルフィン「なんていうか……」
エセル「み、見違えたな……」
リディア「従士様とは思えませんね……」

アニリン「どう? 私とは分かんないでしょ?」

アニリンは変装や演技も得意である。
シロディールの貴族を演じたこともあった為、貴族の所作もほぼ完璧だ。

アニリン「それじゃ、リディアさんとエセルは先にホワイトランに戻ってて。デルフィンさん、私の荷物お願いね」
リディア「承知しました」
デルフィン「ええ、預かるわ」

そうして馬車に揺られ、サルモール大使館へ。

アニリン「どうぞ。お疲れ様」
サルモール・ウィザード「ありがとうございます。さ、お入りください」

アニリン(ノルドとしてハイエルフにおべっかを使われる機会があるなんて思いもしなかったわね)

などと思いながらも、会場へと入ると、サルモール大使のエレンウェンが彼女を出迎えた。

アニリン「お初にお目にかかります、アニリーネと申します。お会い出来て光栄です」
エレンウェン「ああ、招待客リストでお名前を拝見しました。もう少し、あなたのことをお聞かせください。何故このスカイリムに?」
アニリン「我が祖先の故郷ですよ。私自身はシロディール生まれなのですが、こちらに親戚も多く居まして」
エレンウェン「そうでしたか。それでは……」
マルボーン大使夫人、少しよろしいですか!

マルボーン「はい、大使夫人」
エレンウェン「給仕が、失礼しました」
アニリン「いいえ。きちんとした使用人をお持ちのようで、羨ましいです」
エレンウェン「そうですか? ……また後程お目にかかりましょう。どうぞお楽しみください」
アニリン「ええ、ありがとうございます」

アニリン(上手く喋れてはいる筈……出席者にどうも知ってる顔も居るけど、私に気付いてもないみたいだし、大丈夫そうね)

直接会ったことはないが、知ってはいる顔の一人、ソリチュードの首長エリシフ

アニリン「そうですね。楽しんでおられますか?」
エリシフ「ええ、とても。彼女の趣味は非の打ち所がないもの」
アニリン「食べ物、お酒、音楽……確かに、素晴らしい趣向ですね」
エリシフ「そうでしょ? 唯一残念なのは、そんな頻繁に開かれないことね」
アニリン「ああ、それは仰る通りですね。頻繁ならそれこそ夢のようなのですが」
エリシフ「あなたもそう思うわよね」

名前は知っているが、直接会ったことはおろか、顔も知らなかった一人、マルカルスの首長イグマンド

アニリン「そうですね……この席は楽しんでおられますか?」
イグマンド「まあまあだな。エレンウェンはこれの為に懸命な努力をしていた。その結果だろう」
アニリン「あら、そんな風に感じておられるんですね」
イグマンド「ああ。本当の動機が分からないところがある。不可解な女だよ」
アニリン「成程……」

そして、よく知っている顔、ホワイトランの執政プロベンタス・アヴェニッチ

アニリン「そ、そうですね」
プロベンタス「そういうあなたはどこの貴族かね?」
アニリン「シロディールから、観光で。そんなに高位の貴族ではありませんから、砕けた感じで良いんですよ?」
プロベンタス「そりゃ助かる」
アニリン「失礼ながら、あなたのお仕事は何をしてらっしゃるの?」
プロベンタス「ホワイトランの執政をしている。ドラゴンズリーチのバルグルーフ首長にお仕えしているんだ」
アニリン「あら、これは失礼しました、執政閣下」
プロベンタス「いや、いいんだ。実を言うと、早く帰りたいんだ。お偉いさんに囲まれていると、神経を使うからな」
アニリン「ふふっ、それはそうですね。私もです。お互い、頑張りましょう」

アニリン(マジかこの男……全然私だって気付いてないっぽかったよ……

そんなことをしながら、アニリンは徐にカウンターに近付いた。
カウンターで給仕をするマルボーンが応対してくれる。

アニリン「何か飲み物を」
マルボーン「畏まりました」
アニリン「……あっ、待って、ジュースじゃなくてお酒が良いわ」
マルボーン「これは失礼。少々お待ちください……」

アニリン「どうもありがとう、マルボーンさん」
マルボーン「ん? 私の名前を?」
アニリン「言ったでしょう、名前は大切なことだって」
マルボーン「なっ……お、お前……!」
アニリン「シッ。静かに。さっきはありがとね」
マルボーン「ああ、いや……玄関で名前が聞こえたからエレンウェンの気を逸らしたんだ。だが、まさか姿がこうも違うとは……」
アニリン「それはどうも。で、作戦は?」
マルボーン何かして衛兵の注意を逸らしてくれ。そうしたら、後ろの扉を開けて通してやる」
アニリン「そう、分かったわ。見ててね」

実はアニリンは既にそういう人物に目を付けていた。
入口で出会った男ラゼランである。
聞いた話によれば、東帝都社の幹部で、この夜会の常連ではあるのだがその度に酔っ払ってトラブルを起こしており、エレンウェンから禁酒を言い渡されているらしい。

アニリン「ほら、お酒ですよ。コロヴィアン・ブランデーです」
ラゼラン「ああ、貧乏人とケチだらけの集団の中で、なんて気前の良い奴だ! ありがとうよ!」
アニリン「いいえ。それで、代わりと言ってはなんなんですけど」
ラゼラン「おうよ、何でも言ってくれ」
アニリン「少し楽しい余興を見たくなったの。皆が注目しちゃうような、面白いことを一つお願い出来ませんかしら?」
ラゼラン「なんだ、そんなことか。それならぴったりの人材を選んだな! 騒動と余興は大得意だ!

そう言って立ち上がり、ホールの中央へと歩いて行くラゼラン。
アニリンはそっと近くのサルモール兵士の視界の外へ出た。

マルボーン「あのバカに酒を与えたのか……」
アニリン「まさに無敵でしょ」

アニリン(今剣を抜く音が聞こえたな……)
アニリン(あっ、取り押さえられた)

マルボーンに連れられた先は厨房であった。

アニリン「ありがと。幸運を祈っててね」

持ち込んだ妖刀「はたもんば」帝国軍の弓鋼鉄の矢、そしてロックピックを持って、いざ大使館本館へ。

アニリンサルモールがドラゴンを操ってるわけではない?

巡回していたサルモール兵士サルモール・ウィザードを始末し、軽く周囲を漁った後奥の扉を潜ると、そこは中庭であった。
案の定、兵士達が巡回している。

アニリン(夜で良かった。生憎と、これが本職よ。いや、殺しは違うけど)

まず中庭挟んで反対側の通路の兵士を弓矢で。
続いて中庭を歩き回る兵士も背後から忍び寄り、刀で。

扉の前に立っていたウィザードも排除し、妙に厳重に警備されていたエレンウェンの日光浴室に侵入する。

アニリン(誰か話してる……? 一旦隠れてみよう)

アニリン(あ、出てくみたい……あの男、ノルド? 情報提供者なのね。なんか、私と似たにおいがする)

アニリン(言い争ってたサルモールもどっか行ったみたい? あとは巡回だけか)

階段を下りてきた巡回の兵士が再び上階に戻ろうと振り向いたタイミングで、アニリンはその喉を切り裂いた。
死体を近くのカウンターに隠し、建物内を物色して回る。

アニリン「……ん? これは……」

アニリンウルフリック・ストームクローク……捕虜になった経験があったんだ。ストームクロークと帝国の戦争はサルモールの望む結果だったことに違いはないみたいね。ただ、ドラゴンのことはサルモールも殆ど知らないみたいね。あの下級兵士達が知らないってわけじゃないみたい)

アニリン(デルフィンさん……サルモールに狙われてるのは本当だったみたいね。しかも、かなり重要度が高いみたい。よく逃げ延びてるなぁ)

アニリン(……これも……まぁ、持ち帰ろうか)

そして――

アニリン「これが当たりかな? ここの地下に拷問部屋があるわけね。ご丁寧に鍵も箱に入ってたし」

アニリン(誰かが拷問されてる……ん、この声、さっき上でノルドの情報提供者と揉めてたサルモールね)

アニリンリフテンに住んでる老人……エズバーン? って誰だ?)

アニリン(リフテンの、ラットウェイね。覚えとこ)

アニリン(檻から出てったわね。それにしても、囚人が痛みだけで歌う・・と思ったら大間違いよ、二流め。まぁあの囚人は本当に何も知らないくさいけど……)

巡回の兵士が通路の向こう側に行ったタイミングで矢を放ち、排除。
すぐにルリンディルの真後ろに忍び寄ると、これも始末した。

アニリン「よし……この箱ね。ていうかウィッグ鬱陶しいから取っちゃお」

アニリンエズバーン……どうもこの人が鍵っぽいね。それにしても、サルモールもドラゴンのこと知らないどころか、ブレイズのせいだと思ってるみたい。お互いにお互いを疑ってるんだ)

と、その時。

上の扉が開く音がし、何人かが入ってきたのが分かった。
2人は兵士、もう1人は――

マルボーン俺は放っておけ! 早く脱出するんだ!

アニリンそれじゃお言葉に甘えて、逃げさせてもらうわ!
サルモール兵士「言っただろう、逃げられると思って――」

アニリン「はい一人目」
サルモール兵士き、貴様っ!

アニリン「壁の陰を確認せずに真っ直ぐ下りてくる奴があるか、バーカ」
マルボーン「やるじゃないか、助かった」
アニリン「ううん。ごめんね、騒ぎにしちゃって。さて……」

マルボーンの拘束を解いたアニリンは、今度は囚人が入った檻へと入っていく。

アニリン「ほら、起きて」

アニリン「違うわ。私は尋問に来たわけじゃない」
エチエン「何だって? じゃあ、一体何の用だ?」
アニリン「細かく説明すると長くなるわ。取り敢えずこっから出ましょう」

そう言うと、アニリンはエチエン・ラーニスの拘束具を外し、彼を解放した。

エチエン「ありがたい……」

アニリン「あると信じてるよ。さ、どこから出ようかな」

アニリン「……これ?」

先程の机に置いてあった鍵を使って開けると、そこは洞窟だった。
風を感じる方向へ走る3人。
そして、ついに――

アニリン外だーっ! やっと出れた!

マルボーンとエチエンにそれぞれ別れを告げ、アニリンがまず向かったのはリバーウッドだった。
サルモールや衛兵に警戒しながら数日間かけてホワイトラン方面へ抜けたのである。

アニリンサルモールはドラゴンのことを何も分かってないみたい」
デルフィン「本当に? 確かなの?」
アニリン「書類をいくつか持ち帰ったよ。それと、エズバーンって人を探してる
デルフィン「エズバーンですって? 生きているの? サルモールに殺されたのだと思っていたわ、あの変人……まぁ、奴らもドラゴンのことを調べようとしているのなら、当然彼の足取りを追うわね」
アニリン「サルモールはそのエズバーンさんに何を求めてるの?」
デルフィン「手当たり次第ブレイズの一員を殺すという目的以外に、ってこと?」
アニリン「うん。書類に書いてあったもの。『殺さず捕らえろ』って」
デルフィン「彼はブレイズの公文書保管人だったの。大戦中にサルモールが私達をボロボロにする前にね」
アニリン「そっか、ブレイズは元々ドラゴンスレイヤーの組織だから……」
デルフィン「そう。彼はブレイズに伝わるドラゴンの古伝承に精通していたわ。取り付かれていた、と言った方がいいかしらね。その頃は誰も気に留めなかった。私達が思っていた程変な人じゃなかったのね、きっと」
アニリン「サルモールは、ブレイズがドラゴンのことを知ってると思ってるみたいだよ」
デルフィン「皮肉よね? 宿敵の間柄って、全ての災難は相手のせいだと思い込んでしまうのよ」
アニリン「兎も角、サルモールより先にエズバーンさんを見つけないといけないね」
デルフィン「そうね。ドラゴンを止める方法を知っていそうなのは彼だけよ。でも、奴らは彼の居場所を知ってるの?」
アニリン「リフテンの、ラットウェイだってことまでは突き止めてるみたい」
デルフィン「ラットウェイね……リフテンに行って、ブリニョルフという男を探して。彼は……良いコネを持ってるわ。手始めとしては悪くない筈よ」
アニリン「分かった」
デルフィン「ああ、それと、エズバーンを見つけたら……考えすぎだと思うかもしれないけど、彼はあなたを信用しないかもしれない」
アニリン「いや、そう簡単に信用してもらってもちょっと困るけど……」
デルフィン「……変わってるのね。まぁいいわ。もし信用しなかったら、『降霜の月の30日にどこに居たか』を尋ねて。彼には通じる筈よ」
アニリン「合言葉ね、分かった。じゃ、準備したらリフテンに行ってみるよ」

アニリン「さーて、大変なことになってきた……」

次回へ続く。

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