こんにちは、海里です。
唐突ですが、私はWeb小説投稿サイト「小説家になろう」にて異世界転移ものの作品を書いています。
JK異世界へ往く ~ こちらとあるWAC、何でも出せるチート(語弊)もらって異世界に飛ばされました
作品としての内容は兎も角、所謂「異世界」ジャンルの作品を書くに当たって、世界観の構築というのはどうあっても避けられない作業になります。
異世界にも文明が存在する以上は、我々の住む世界とは異なる文化や言語が存在し、当然ながら住民が違えば歴史も違うものを歩んできている筈です。
問題はどの程度その世界を作り込むのか、といったところでありましょう。
我々の住む世界が人間一人にはとても広く深いように、創作の世界観も設定は多ければ多い程に深みが増し、物語に説得力が出てきます。
しかし、例えば言語を一から作り、文明の発達の過程を事細かに設定し、文化を設計していく――というのは並大抵のことでは出来ません。
それこそ各分野の専門家を集め、よく検討して作らなければならなくなるでしょう。
そんなこと、Web上で趣味程度に創作をしたいのだという人には荷が重すぎます。
では、最低限どういうものを設定したらその世界観の説得力が出てくるのか、といえばそれは精々地形、歴史、文化、政治制度くらいになってくるのではないでしょうか。
つまり、世界観を創作する上で最も重要なのは、その世界にどのような歴史が存在し、それによってどのような文化が生まれ、発展してきたのか、という部分になります。
そしてそれをいかに受け手に想像させるかによって、説得力が生まれ、世界観に深みが増すのです。
そこで今回はなろう系作品で特に多いヨーロッパ風異世界の「地名」という、そんなに重要でもなさそうな割に多く、そしてよく目につくものを考察していきたいと思います。
そもそも地名とはどのように決まるのか?
いきなりですが、皆さんは地名というものがどのように決まっているのかご存知ですか?
答えは簡単。
世界に共通するたった一つの法則などというものはありません。
地域や文化によってある程度の法則性はありますが、逆に言えば地元の人々やそれを発見した人々が好き勝手に付けてしまうことが多いのです。
それはそこに存在するものであったり、領主の名前であったり、住んでいる人々の総称であったり、色々な由来があるものです。
ヨーロッパでは地形や人名が由来の地名が多く見られます。
また、多くの言語や文化が入り混じった歴史的経緯からか、別の言語由来の地名も多く、掘り下げると面白い歴史が出てくることも多々あります。
地形由来
地名というのは大抵の場合、そこに何があるのかで決まります。
そして人々は往々にしてそこの地形をそのまま地名にしてしまうものです。
山、川、森、谷等々、そこにどんな地形があるのか想像出来る地名だとイメージがしやすく、説得力が増すでしょう。
例えばグレートブリテン島の沿岸部には「Portsmouth」「Weymouth」「Bournemouth」等、「mouth」のつく地名が多く見られます。
これは「河口」を意味し、先述の3つの地名はいずれも河口部の港湾地域です。
また、ドイツの「Nuernberg」は「岩山」を意味するとされています。
施設由来
先述のように、地名は大抵の場合そこに何があるのかで決まります。
それは時にそこにある施設がそのまま地名になってしまうものです。
例えばドイツの「Hamburg」「Duisburg」等に見られる「burg」、スコットランドの「Edinburgh」「Bamburgh」等に見られる「burgh」、フランスの「Strasbourg」等に見られる「bourg」。
これらは全て「城」「砦」を意味しており、城が存在するか、かつてそこに城が存在したことを思わせます。
その他にも村、農場、駐屯地、教会等がよく由来になっています。
人名由来
歴史を紐解くと、その地域を支配している人物が新しい土地を開拓してそこに新しい地名を付けていたり、城砦等を建設してそこに自分の名前を付けたりしていることが多くあります。
例えばフランスの「Charleroi」はスペイン王カルロス2世のことですし、ドイツの「Karlsruhe」は「カール3世ヴィルヘルムの休息地」といった意味です。
また、キリスト教の聖人の名前が村や街の名前になっていることも多く、聖人に限らず偉人の名前をそのまま地名にしてしまうことも多いようです。
ヨーロッパに限らず、大航海時代に欧州人が入植した中南米やアフリカにも多く見受けられます。
民族由来
歴史的に見るとある国が別のある国を征服したなどという出来事は実にありふれたことです。
そうでなくても同化や離散等で民族として形を喪った民族というのは少なくありません。
地名にはそういった民族の名前が残っていることがあります。
例えばドイツの「Bremen」は「Breme」または「Bremum」と呼ばれる部族が入植したことが始まりだとされています。
歴史由来
歴史上の出来事を街の名前として冠している場合もあります。
例えばロシアの「Октя́брьск」は1917年に起きた「十月革命」が由来となっています。
こういった地名は敢えて日本語訳して「十月革命市」や「八月革命市」というような名前をつけても独特の味があって良いかもしれませんね。
その他の由来
ある国から見た方角や、地形や土地の特徴を何かに準えて、などといった地名もあります。
例えばオーストリーはドイツ語で「Oesterreich」であり、そのまま「東の国」を意味します。
因みにオーストラリアはラテン語で「南の地」を意味する「terra australis」が由来となっています。
また、ドイツの「Angeln」半島はこの地域自体の形状から「釣り針」を意味するという説があります。
スカンディナヴィア半島も古ノルド語の「Skad aujo」を由来としているという説があります。
実際に架空の地名を作ってみる
以上の点を踏まえて、実際にヨーロッパ風の架空の地名を作ってみましょう。
全く架空の言語を作る
最初に書いた通り、架空の言語を一から作るというのはとても大変な作業です。
しかし、地名や人名を考えるだけなら、実はそれほど難しい作業でもありません。
そもそも架空言語自体は文法と単語と文化が揃っていれば作れます。
簡単な言語であれば、基本的な文法さえ決まればあとは単語を増やしていくだけになる為、長い時間をかければそんなに難しいものではありません。
ただ、辞書を作らなければならない為、とても大変です。
さて、地名を全く架空の言語でつける場合は、地形や人名等の簡単な単語をいくつか用意し、その土地の特徴や歴史に合わせて名付けるだけです。
実際にやってみましょう。
Hajlanmar [hej-lan-mar]ハイらンマール ― ハイランマール【東の港】 mar [mar]マール ― 港、港湾 hajlen [hej-len]ハイれン ― 東、東方、東部 hajlan [hej-lan]ハイらン ― 東の
Uratohm [ura-tohm]ウラトゥム ― ウラトーム【我々の家】 ur [urr]ウッル ― 私 ure [u-re]ウッレ ― 私達、我々 ura [u-ra]ウッラ ― 私達の、我々の tohm [toh-m]トゥム ― 家
このように簡単な単語を考えて繋げるだけでもある程度は作れます。
訛りの経緯等も考えると楽しいかもしれません。
また、架空の言語なのである程度整ってさえいれば説得力は抜群です。
外野から何か言われる心配もまずありません。
何せ、作った本人とその本人が作り上げた世界にしか通用しない言語なのですから。
現実の言語を流用し、架空の地名を作る
私が主に使っている手法です(稀に実在の地名の流用もしています)。
架空の言語を作るよりは面倒が少なく、調べ物が好きならかなり楽しめると思います。
ただ、流用したつもりじゃなくても探してみると実在する地名だったりする場合もあります。
先述のパターンに当てはめれば被る可能性くらいいくらでもあるので、気にしないでおきましょう。
私が「小説家になろう」で連載している作品に登場するオーリアナ王国は、イングランドとスコットランドをモデルにしている為、今のところ登場する地名はその殆どが英語です。
以下にその例と、英語圏の地名でよく見かける単語の一部を示します。
マーシャム村【Marshham】「marsh」は湿地、「ham」は集落。元々は「辺境の集落」を意味するマーチャム(Marchham)だったが、何代か前の領主の時代に間違えられたものが定着してしまった。湿地はない。 ノーズロック村【Noserock】「鼻(nose)」と「岩(rock)」。海岸に大きな鼻みたいな岩がある。 ハニンガム【Haningham】「ハニング家(Haning)の集落(ham)」。かつてこの地を支配していたハニング家が建設した集落が原形となっている。 グレンバリー【Glenbury】「グレン(Glen)の城(bury)」。ダンジョンから出没する魔物の対策として、グレンという名の貴族が建設した砦を起源としている街。
~バラ、~ボロー【-burgh】城、城砦。エディンバラ、ピーターバラ等。 ~バリー、~ベリー【-bury】城、城砦。カンタベリー、ソールズベリー等。 ~チェスター【-chester】軍団野営地。マンチェスター、チチェスター等。 ~フィールド【-field】平野、平原。シェフィールド、ハットフィールド等。 ~ハム、~アム【-ham】集落。バーミンガム、ノッティンガム等。 ~マウス、~マス【-mouth】河口、湾。ポーツマス、エクスマウス等。 ~プール【-pool】港。リヴァプール等。 ~トン【-ton】町。ライミントン、ノーザンプトン等。
他にも多種多様な単語があり、多種多様な組み合わせ方があります。
地名接尾辞 – Wikipedia等、参考になるサイトも少なくありませんので、是非調べてみましょう。
実在の地名を流用してしまうのも一つの手
身も蓋もない話ですが、実在の地名をそのまま流用してしまうのが最も手っ取り早く、簡単で確実な方法です。
勿論、その地名の由来や意味は考慮した方が良いですし、流用するならあまり有名でない地名の方が良いでしょう。
例えばイングランドの「ロンドン」はその由来が不明で、何より有名過ぎるので、流用するには少々向きません。
また、流用元はある程度統一した方が良いでしょう。
例えば、とある国の地名や人名を決める際にドイツの地名や人名を流用してきた場合は、その国や周辺地域はドイツ語圏の地名から流用してくる方が説得力があります。
まとめ
結局のところ、創作の世界観に説得力を持たせる為に最も重要なのは歴史と文化になります。
今回ご紹介した地名の作り方に関しても、最終的にものを言うのはそこが何故そのような地名で呼ばれているのかという理由と経緯です。
それらを考慮して地名を考えるだけでも世界観の説得力がグッと増します。
普段何の気なしに目にしている地名にも関心を持ち、その由来を調べてみる習慣を持つだけでも思考方法が随分と変わるのではないでしょうか。
この記事が創作をされる方の一助となれば幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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